女性は「大きな目ですね。」と言われれば嬉しくても、「大きな鼻ですね。」と言われて嬉しい人はまず居ません。
女性にとって鼻は顔の中心であっても目から比べれば脇役に徹しなけらばならず、美しい人の顔を思い出すとき、目の印象がハッキリと思い出されても、鼻は漠然としか思い出せないくらいの『主張の弱い鼻』の方が顔全体としては綺麗、美しいと感じるものです。
これは当然、鼻翼に関して言えます。鼻翼が目立つ事は、粗野なイメージ、鼻息荒くて精力旺盛など、女性らしい慎ましさと反対のイメージを演出します。
また鼻は成人となった後も年齢と伴に大きくなります。ですから老人はたいてい鼻の大きな印象があります。そのため鼻翼縮小・鼻尖縮小を行うと若々しいイメージになります。
また若い女性の鼻翼の横幅の理想は35mmほどで左右の目頭間位が女性らしいと言えます。
鼻翼縮小術の適応が高い鼻は、獅子(しし)鼻、あぐら鼻などと呼ばれます。語彙として獅子鼻とは、大きくて丸い鼻の穴にしっかり張った感じの小鼻を持つ鼻を指すようで、あぐら鼻とは、鼻の穴が横に広がりつぶれた感じの小鼻を持つ鼻を指すようです。
一般に手術適応になる患者さんは、鼻の横幅が広い、鼻が大き過ぎるなどと言われて手術を希望されます。この手術はは隆鼻術ほど多くはないものの、美容外科ではポピュラーな手術の1つです。
また鼻尖縮小手術で団子鼻を細くすると今まで目立たなかった鼻翼が目立ってくることもあり、経験豊富な医師は鼻尖縮小手術を希望する患者さんが来られた時、鼻翼縮小手術を薦める事があるのは、しばしばあるものです。隆鼻術+鼻翼縮小術という組み合わせもまたあります。
局所麻酔で行うのですが、術前に安定剤の内服などは手軽で且つ効果的です。局所麻酔は実はいきなり鼻に打つのでなく、鼻の横の眼窩下神経の近くに注射します(眼窩下神経ブロック:U枝のブロック)。これは狭義には局所麻酔というより伝達麻酔と言われるものです。この麻酔自体は頬の柔らかいところから注射の針を刺すので、あまり痛くありません。そしてこれにより、鼻翼に麻酔を打つ段階でほとんど無痛になっています。
ですから、こと鼻翼縮小(小鼻縮小)においては静脈麻酔等の更なる麻酔は全く不要です。
手術法の骨子は1.鼻翼の張り出しの改善、2.鼻翼幅の改善 となります。鼻翼の「外側+内側+鼻孔底切除」にて目的に達します。 近年は鼻翼の皮下で左右にナイロンの糸を通し、閉め寄せて幅を狭くする手技もあります。
これはループ縫合(ループ法)、ラウンド縫合(法)、サークル縫合(サークル法)などと呼ばれ、プチ整形的と言えますが、これは幅は狭くなるものの小鼻の張り出しは逆に増します。また笑った時に自然な鼻の広がりが生じず、皮下にツッパリ感を覚えます。そのうちナイロン糸が組織を切ったり、組織が伸びたりして違和感は無くなって来ますが、効果も失われ鼻の幅はほぼ元に戻る傾向にあります。丁度埋没法の二重で無理な形を糸で結ぶだけで作っても結局取れてしまうのと似たものがあります。従って術後の表情を出す際の不自然さ、永続的効果は期待できない治療とは言えます。
幅を狭くする手技で鼻孔内で皮下軟部組織を弁状に起こし(フラップ法)それを左右に交叉させて固定する方法もあります。私は陥没乳頭の手術で同様のテクニックがあるので何例か行いましたが、これ単独では後々軟部組織が伸びるようでほとんど効果が失われました。これは鼻孔底切除術と組合わせると効果は後々残りますが、正直言いまして鼻孔底切除単独でやった時とほとんど差がないようでした。
また鼻の穴を小さくしたいというのは鼻孔縁の皮膚切除となります。鼻孔を円に例えれば円周の一部を切り取れば穴が小さくなるのは当然です。鼻孔縁を切り取るとなれば通常は鼻の幅も狭くするのも兼ねて鼻孔底切除となります。
この部位は谷間であり、元々赤味もあって傷は目立ち難い部位と言えます。丁寧に縫合した手術では、患者さんからクレームとなるほどの目立つ傷跡にはなり難いものです。しかし「ここは皮脂腺が発達しているため傷が目立つ」との記載している本などもありますが、それは逆であり、特に皮脂腺の発達している鼻の頭の部位は例えば黒子(ホクロ)の切除縫合をしても半年もすればほとんど傷が分からなくなる程です。つまり皮脂腺の少ない鼻翼基部だからこそ鼻先の傷より傷が目立つというのが本当のところです。 傷痕の予防・治療には、ケロイド・肥厚性瘢痕用のリザベン(トラニラスト)を処方する施設もあるようですが、皮下の中縫いをキッチリしている限りは、リザベンの必要性はほとんどないと考えます。 それより術後早期は傷が乾燥しないように軟膏で湿潤を保つことが大切です。
術後1週間で、抜糸のために来院。術後の腫れは軽く、やや肉厚に見えるレベルです。シャワーは患部を擦らさないように注意すれば手術当日からOKですが、入浴は組織からの出血、充血を促すので、控える方が賢明です。糸(ループ法など)や皮下軟部組織弁(フラップ法)単独は別として、鼻孔底切除・外側切除で1度整えた鼻翼は、よほどのことがない限り、何年もその形状を維持するものです。
小鼻の張り出しと鼻の幅をしっかり変えてしまうと、鼻穴の大きさが小さくなります。小指も入らなくなったような小さい鼻の穴には、専用のシリコン製の鼻の栓を入れると改善します。これはレティナという商品名で、私は嘗て安見先生から「美容外科においてはあまりの広鼻の人には、レティナを使用するのを前提に思いっきり鼻孔底切除を行い、後療法としてレティナを毎日使ってもらうのもあり。」と教わっていました。
アフリカの人の一部には風習として、唇に穴を開けてコルクを詰め、そのコルクを徐々に大きなものにして穴を大きくするというものがありますが、それと同様です。患者さんにとっては鼻栓を詰めたから、またカッコ悪い鼻に戻るわけではありません。鼻栓の鼻穴に詰める部分は日本人の美意識にあった縦長を呈していますから、形が良い感じで鼻の穴が大きくなります。1日中入れておいても構いません。
鼻の穴が前から見て見え過ぎるから見え難くしたいという希望は実は結構あります。それは単にブタ鼻の形の人だけでなく、鼻尖が下に伸びているのに係らず、鼻尖から外へ向かう鼻の穴の縁が上に向かっているため、鼻の穴が目立つ人もいます。この場合、鼻尖を下げて欲しいと患者さんが希望することもありますが、鼻先を下げても付随して鼻の穴の縁が引っ張られ被ってくるに過ぎず、根本解決になりません。 この根本治療とは、鼻の穴の縁から内側に入った部分を切開し、隠れている皮膚を下に下ろして鼻の穴を見えなくし、切開して開いた部分には耳の皮膚と軟骨を移植するのです(耳介からの皮膚軟骨同時移植)。 軟骨だけ移植しても鼻の皮膚がそれほど伸びてこないので、はやり皮膚も一塊に移植した方が審美的に良好な成績が得られます。 変形鼻の修正などで行われます。